映画「世界の果ての通学路」

僕らの希望をつなぐ旅。
フランス発、地球を通学路という観点から捉えた驚きと感動のドキュメンタリー!

4月、シネスイッチ銀座ほか全国順次公開!

本作の始まりについて

 ケニアのマガジ湖の近くで、野生動物を題材にした映画のロケハンをしていたら、遠くから3人の若いマサイ族の若者が走ってきた。呼び止めると、彼らは夜明け前に家を出て、丘や湖を越え、2時間も走って学校に通う途中だという。最年少の子は誇らしげに石版やペンを見せてくれた。そして、「遅刻するから」とすぐに走り去ったんだ。ショックを受けた私をそこに残してね!  私はとても感動した。私自身が世界を旅するために学校を中退したからかもしれない。それまで私は旅先のサバンナや森で彼らのような子どもに多く会ってきた。だけど、僕はその日まで、子どもたちが勉強のために偉業を達成しているなんて思いも寄らなかった。その時、命の危険を冒してでも勉強に打ち込む子どもたちを主人公にしようと、この企画がひらめいたんだ。

子どもたちのキャスティング

 ユネスコと教育関連の問題に取り組む国際組織の「エッド・エ・アクション」の協力を得て、世界中から地理的に特殊な学校をピックアップした。次に通学にもっとも苦労している生徒を教えてもらい、60の物語を見つけた。その中から私たちが選んだのは、通学に苦労しているだけでなく、学問が自分の将来を切り開くと信じている子どもたちだ。その日唯一の食事(給食)ができるから、何とかして学校に通う子どももいるからね。

撮影について

 彼らには普段通りの生活を撮影させてもらうために、まず、私がひとりでそれぞれのロケ地に10日間滞在した。カメラなしでお互いに夢や希望について語り合ったり、遊んだり、一緒に通学したよ。そうやって信頼関係を築き、心を開いてもらったんだ。  撮影はひとりにつき12日間の日程で、2012年の2月から10月におこなった。フランスからはチーフカメラマンと録音技師と私が参加し、ロケ地ではロケーションマネージャーなど6〜7人が集まり、10人くらいの小所帯にとどめた。子どもを追うには、機動力が必要なので、手持ちカメラでの撮影を多用した。特に、ジャクソンと彼の妹はかなり早く歩くから、追いかけるのが大変だった(笑)。 撮影隊はベストポジションで撮影するために、盗賊や野生動物に襲われる危険を承知で、荒野でキャンプを張ったよ。

映画に込めた思い

 私たちは、登場する4人の子どもを通して、女子教育の問題、身体的な障害、貧困といったテーマも描きたかった。住環境が厳しければ厳しいほど、学習に対する子どもたちのモチベーションは高くなる。映画からわかるように、子どもたち自身も親の世代とは違い、勉強できる時代に生まれて幸運だと身に浸みているからだ。私たち大人は、エネルギッシュでモチベーションの高い彼らを、もっとサポートすべきだ。 今は地球上の最も辺境の地でさえ、教育が子どもの将来を左右すると気づき、学校に通わせる流れに変わってきている。15年後が楽しみだ。何もないようなところから来た人々が学び、人間的にも、知的に成長しているだろう。地球規模で考えてもとても幸運なことだ。この作品の子どもたちが与えてくれる希望やエネルギーから、そんなことを感じてもらえたら嬉しいね。

パスカル・プリッソン プロフィール

自然を題材にした映像で、ナショナル・ジェオグラフィック誌やBBC放送向けTVドキュメンタリーを制作してきた。12年間ケニアのマサイ村に通いつめ、世界で初めて部族の映画撮影に成功した『マサイ』(03)が劇場デビュー作となる。2作目となる『世界の果ての通学路』がフランスで2013年ドキュメンタリー作品の興業成績1位を記録した。ほか『Safari』(08) の共同脚本、『Les mysteres de Clipperton』(05)の共同監督など。
※完全版は劇場用パンフレットに掲載されます。